東急ハーヴェストクラブ伊東
日本有数のお茶の生産地静岡県。
伊豆半島にある伊東市には“ぐり茶”と呼ばれる緑茶がある。
今回の特集では、伊東の名産である“ぐり茶”に注目し、その歴史と魅力を紹介する。
さらに地元で活躍する陶芸作家の器で“ぐり茶”を愉しむ優雅な時間をご提案。
日常の中にある小さな喜びを感じながら静かにお茶を味わうひとときをどうぞ。
My Harvest
伊東の名産には山海の幸が多々あるが、“ぐり茶”はご存知だろうか。大正8年創業の市川製茶をはじめ、伊東で製造販売されているお茶で、煎茶や紅茶、ウーロン茶などと同じお茶の木の葉からできている緑茶の一種。静岡県東部の伊豆のお土産として親しまれている。
勾玉のような茶葉の形は緑茶をつくる揉捻(じゅうねん)作業のときに生じるという。揉捻とは、畑で刈った茶葉を蒸したあと何度も揉みながら丸めていく工程のこと。このとき一般的な茶葉は針のようにまっすぐ撚るので伸び茶と呼ばれている。
一方、ぐり茶のような形は丸めながら撚るため玉緑茶と呼ぶ。柔らかくないと丸める作業ができないため、用いる茶葉は摘みたての一番茶から二番茶まで。市川製茶では、こうしてできた荒茶を独自ブレンドしてぐり茶を製造している。香りもよく、その味わいは渋みや苦みが少ない、本来の茶葉が持つ甘さとまろやかさが感じられる。深蒸しした茶葉を使っているので、美しい緑色が際立つお茶の色も特徴のひとつだ。
春の兆しを感じるこの季節、ぐり茶発祥の地、伊東でゆったり一服してみてはいかがだろう。
同じ土地で育まれたモノには、響き合う魂が宿る。地産のぐり茶を伊東でつくられた茶器でいただくのも一興ではないだろうか。
そこで伊東市にアトリエを構える陶芸作家、齊藤十郎さんをご紹介したい。十郎さんは民藝の思想に触発されて、皿やぐい呑み、急須、湯呑み、菓子受けなど日常使いできる器を中心に作陶。機能性だけでなく、飽きが来ず、見て愛おしいと思ってもらえるものを目指しているそうだ。
また、スリップウェアや象嵌(ぞうがん)、切子などさまざまな技法を積極的に用いているのも特徴だ。スリップウェアとは、英国の作陶技法の一つで薄い泥を半乾きの生地の上に垂らして文様を描き出すもので、十郎さんの代名詞にもなっている。絵筆を使った絵付けとは違い、予測できない模様や線が現れることが面白いと感じているそうだ。
こうして形作った器をアトリエ横の大きな登り窯で焼く。火入れに使うのは伊豆で採取された薪。灰が舞って焼物に絶妙な色味を醸し出し、この地ならではの表情が生まれるのだ。
十郎さんの作品は「雑貨店こさんち」で購入できるほか、都合が合えばアトリエを訪れることも可能だという。ぜひ、旅の思い出に一期一会の作品を連れ帰ってみては。