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旅行ガイド「るるぶ」国内編集長も認める避暑地「草津」のポテンシャルとは?

2025/07/31

近年、日本では夏場の気温が上昇傾向にあり、35℃を超えるような猛暑日を記録する地域も少なくありません。そこで注目を集めるのが、高原の避暑地です。標高約1,200mに位置する草津は、軽井沢、那須高原などと並ぶ歴史ある避暑地としても知られています。夏場でも夜の湯畑に吹き下ろす風は涼しく、幻想的なライトアップも楽しめます。周辺には高原のハイキングルートなども整備されており、家族で長期滞在を楽しむことができます。旅行ガイド「るるぶ」情報版国内編集長の廣井友一さんに避暑地・草津の魅力について聞きました。

近年夏の気温が上昇中。避暑地リゾートに注目が集まる

近年、日本国内の気温上昇がますます顕著になっています。連日35℃を超えるような猛暑を記録する地域も多く、健康被害の影響も懸念されています。気象庁のデータによると、2024年8月の東京都の月平均気温は29℃と2015年から2.3℃も上昇しています。この影響もあり、2024年5~9月の全国の熱中症による救急搬送人数は97,578人と、2015年同期間の55,852人から大幅に増加しています。

標高約1200m。草津の避暑地としてのポテンシャル

こうした異常気象の影響もあり、夏の旅行先に「避暑地」を挙げる人が多くなっています。JTBパブリッシング発行の「るるぶ情報版」国内編集長の廣井友一さんに話を聞くと、軽井沢や那須高原など避暑地エリアのガイドブックは、夏場の売上が好調とのこと。なかでも廣井編集長が密かに注目するのが、避暑地リゾートとしての草津のポテンシャルです。

「『にっぽんの温泉100選』総合ランキングの不動の1位で、日本屈指の温泉地として知られる草津ですが、避暑地としての歴史も古く、明治時代には軽井沢と並ぶ避暑地として、外国人にも注目されていました。温泉地としての魅力に着目し、この地を愛したドイツ出身の医師ベルツは有名で、今も草津町には『ベルツ記念館』があります。標高約1200mで、夏場の平均気温は東京より約7~8度も低い。全長約500mのジップラインを楽しめる高原のレジャースポット『天狗山プレイゾーン』はじめ、周辺には高原風景を満喫できるハイキングコースやドライブコースが多数あります。日帰りだけでなく、家族で夏休みに長期滞在するのもいいと思います」(廣井編集長)
【気象庁】2024年5~9月 草津の平均気温
地点5月6月7月8月9月
東京20.0℃23.1℃28.7℃29.0℃26.6℃
草津12.2℃15.8℃21.1℃21.4℃18.9℃
【施設情報】
「湯畑」
住所:群馬県吾妻郡草津町草津
電話番号:0279-88-0800(草津温泉観光協会)
ライトアップ時間:日没~24:00

夏ならではの草津温泉の楽しみ方

「草津の魅力は湯畑を中心に放射状に広がる街を徒歩で気軽に回れることです。特に温泉街の中心部は起伏があり路地も入り組んでいるので、いろいろな景色に出会うことができます。エリアの規模が大きい軽井沢や那須高原に比べても、街歩きが楽しい場所といえるでしょう。標高も約1200mと、軽井沢(約1000m)や那須高原(約1000m)と比べても高く、温泉療養と避暑を同時に楽しめるディスティネーションとして、今後ますます注目を集めるのではないでしょうか」と廣井編集長。そこで気になるのが、夏の草津の楽しみ方です。
「草津は湯畑周辺の徒歩圏内に共同浴場が多数あるので、夏場も外湯めぐりが楽しめます。おすすめなのが、避暑地の特徴を生かして、涼しい夏の夜の風を感じての外湯めぐり。遅くまで開いている共同浴場もあるので、ライトアップされた湯畑を眺めながら、夕涼みもかねてのんびり巡ることができます。また、まだ涼しい朝の時間に湯畑から西の河原の足湯まで散歩するのもいいでしょう。カフェや休憩処も湯畑周辺に点在しているので、名物のソフトクリームやプリンで涼をとるのもおすすめです。軽井沢や那須高原に比べると“いい意味で”避暑地として知られていないので、湯畑周辺やお盆の時期を除けば混雑が少なめで、飲食店や観光スポットでの待ち時間が比較的短いのも、居心地のよさの理由かもしれません」(廣井編集長)
【施設情報】
「西の河原公園」
住所:群馬県吾妻郡草津町草津
電話番号:0279-88-0800(草津温泉観光協会)
ライトアップ時間:日没~24:00

「るるぶ」国内編集長が期待する草津の今後

国内外から注目を集める草津温泉では、現在もリゾート開発が進んでいます。湯畑エリアや西の河原公園まで徒歩圏のロケーションで、ホテルステイを満喫できる長期滞在型の施設も増えています。日中は避暑地らしいアクティビティを楽しんで、夕方の涼しい風が吹いてきたら浴衣に着替えて、草津の温泉街を散策するのもいいでしょう。連泊してゆったりと滞在時間が取れるとさらに、草津の魅力を実感できるはずです。高原の涼しい風、清々しい緑、漂う硫黄泉の香り、幻想的な夜の湯畑など、夏場の避暑地としても大きなポテンシャルを持つ草津の今後の可能性について、廣井編集長に聞きました。
「これからの草津は、温泉と健康の関係に着目したウェルネスツーリズムのディスティネーションとして、さらに洗練されていくと思います。周辺の四万温泉、万座温泉などとも連携して、長期滞在やリピーターが増えることで、観光地としてもさらに発展することでしょう。もうひとつはインバウンド視点。温泉+日本の旅館、そして冬のスキーリゾートの最強コンテンツがここには揃っています。オーバーツーリズムにならないよう、草津の核となるよさを大切にしてほしいですね。大分県の別府温泉や四万温泉の中之条ビエンナーレなど、近年日本各地で開催されている国際規模の芸術祭が草津でも開かれると面白いですね。老舗温泉宿とアーティストがコラボレーションしたインスタレーションなど、草津にしかない魅力を広く発信できるのではないでしょうか」

夏の草津で楽しみたいひんやりグルメ

ここからは、実際に草津を訪れた取材班が見つけた夏にピッタリのスポットをご紹介しましょう。まずは、ひんやりグルメのおすすめを2軒。いずれも湯畑周辺にあります。

群馬育ちの地鶏のたまごを使用したたまご菓子専門店
「草津たまごファーム」

1軒目は、湯畑近くにあるたまご菓子専門店「草津たまごファーム」。群馬県産の地鶏卵を使ったプリンや大粒のたまごボーロが有名で、草津土産の定番のひとつです。夏場のおすすめは、「地鶏たまごソフト キャラメルソースがけ」(420円)。甘さ控えめのソフトクリームとキャラメルソースの相性抜群です。店頭に湯畑を眺めながらスイーツを食べられるテラスも設置されています。「草津ぷりん」(450円)も食べ歩きに人気です。
【施設詳細】
「草津たまごファーム」
住所:群馬県吾妻郡草津町草津401
電話番号:0279-82-1911
営業時間:9:30~18:30
休み:無休
駐車場:なし

足湯を楽しみながらスイーツを満喫!
「湯畑草菴 足湯カフェ」

2軒目は、湯畑至近の休憩処「湯畑草菴 足湯カフェ」。湯畑沿いの細い路地を進むと足湯が併設された和モダンな雰囲気の隠れ家カフェが見えてきます。おすすめは、「花豆抹茶パフェ」(850円)。濃厚な抹茶アイスがふっくらと炊いた花豆とよく合います。そのほか、群馬名物こんにゃくを使った「蒟蒻バブルソーダ」(800円)も絶品。21時30分まで営業しているので、ライトアップされた湯畑周辺を歩きながらスイーツを楽しむのもいいでしょう。
【施設詳細】
「湯畑草菴 足湯カフェ」
住所:群馬県吾妻郡草津町118−1
電話番号:0279-89-1011
営業時間:10:00~21:30
休み:無休
駐車場:なし

ファミリーで思い切り楽しめる高原アクティビティ

夏の草津は、ファミリーで楽しめるアクティビティも充実しています。まず、まだ涼しい朝の時間帯は、西の河原公園を散策するのがおすすめ。のんびりと「足湯」に浸かりながら高原の風を満喫できます。

ファミリーで訪れたい「天狗山プレイゾーン」

西の河原公園から徒歩でアクセスできる場所にあるのが、「天狗山プレイゾーン」。ここは草津温泉スキー場のゲレンデを使った夏場のプレイスポット。天空のゴンドラ、パターゴルフ場、テニスコート、トランポリン、ドッグランなど、ファミリーで楽しめるさまざまなアクティビティが用意されています。ここなら子どもが思いきりはしゃいでも大丈夫です。
なかでも人気なのが「BanZip TENGU」です。全長約500m、高低差約108mのジップラインで、大空を舞う鳥になったような感覚を味わえます。標高1370mの天狗山山頂から眺める草津温泉街とその向こうの山々はまさに絶景。まさに真夏にピッタリのアクティビティといえます。対象は小学生以上(体重25kg以上)なので、ファミリーで楽しめます。
小学生未満のお子さんがいる場合は、「BanZip TENGU」の隣にあるブランコ「SKY SWING」なら利用可能です(4歳以上)。
天狗山山頂までのアクセスは、「パルスゴンドラ天狗」を利用。全長473mを約4分で上がることができます。3連結キャビンの最前列は、床下がガラス張りになっており、スリルを楽しむことができます。
夏場の8~10月には、草津温泉街の夜景を見下ろすナイトゴンドラを限定日程で催行しています。広大な駐車場があるので、車でもアクセス可能。料金やイベントスケジュールはお出かけ前に、「天狗山プレイゾーン」の公式サイトで確認しましょう。
【施設詳細】
「天狗山プレイゾーン」
住所:群馬県吾妻郡草津町草津白根国有林158林班
電話番号:0279-88-8111
営業時間:4月下旬~11月初旬9:00~17:00(最終受付16:00)
休み:期間中無休
駐車場:あり

ひんやりパワースポット「氷室」ハイキング

「天狗山プレイゾーン」を満喫して、まだ夜まで時間がある場合は、ゲレンデの隣にあるハイキングコース「氷谷コース」を散策するのがおすすめです。片道20~25分の遊歩道は、スニーカーでも歩ける状態に整備されており、ファミリーで森林浴を楽しめます。ゴールは、森の中にある岩に埋もれた「氷室」。苔むした遊歩道は、氷室手前から急にひんやりとした雰囲気になり、近づくほどに温度が下がるのを体感できます。氷室の中には、7月まで天然の氷が残っています。夏にピッタリのひんやりパワースポットです。
【施設詳細】
ハイキングコース「氷谷コース」
住所:群馬県吾妻郡草津町草津白根国有林158林班
「天狗山プレイゾーン」併設駐車場からアクセス可能

上級者向け「嫗仙の滝」ハイキングコース

アウトドア派に向けたおすすめスポットをもうひとつご紹介しましょう。トレッキングシューズなど本格的な装備で訪れたいのが、「嫗仙の滝(おうせんのたき)」を目指すハイキングコース。滝に向かう下り中心の往路は約20~25分、本格的な登りになる復路は30分以上かかる上級者コースです。深い森を抜けると現れる落差25mの滝は、まさに圧巻。冷たい川の水に足を浸しながら、雄大な絶景を楽しむことができます。滝の脇には、「森の巨人たち100選」に名を連ねる、樹高35m・幹周6.7mのカツラの巨木があります。
【施設詳細】
「嫗仙の滝」
住所:群馬県吾妻郡草津町
「嫗仙の滝」へ向かう遊歩道の入口に無料駐車場あり
  • ※紹介した飲食店、レジャースポットは、すべて当記事取材班がセレクトしたものです。ハイキングスポットの「氷谷コース」「嫗仙の滝コース」は、いずれもクマの目撃情報があります。ハイキングをする際は、クマ鈴を持参し、地元の最新情報を聞いてから十分に注意して出かけましょう。
廣井友一
(ひろいともかず)
株式会社JTBパブリッシング 出版コンテンツ事業本部 情報メディア編集部 「るるぶ情報版」国内編集長。2000年に入社後、「るるぶ情報版」海外編集長、月刊誌「ノジュール」編集長などを経て現職。国内外の観光地、リゾート、温泉などの取材経験が豊富。「個人的にも夏場は避暑地で連泊するのが好きです」。

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